アール・ヌーヴォーのポスターを蒐集するには【ブログ連載第3回】

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    連載第3回:アール・ヌーヴォーのポスターを蒐集するには〜その1

     

    このブログ連載はアルフォンス・ミュシャやトゥールーズ・ロートレックを含むアール・ヌーヴォーの有名な作品をポスターや版画を中心に絵と解説で紹介やアール・ヌーヴォーの大まかな歴史やポスター製法の用語(例えばリトグラフとは)などを更新いたします。アール・ヌーヴォーのポスター傑作集連載の第3回です。

     

     

     

     

     

    連載第1回と2回ではアール・ヌーヴォーの基礎知識を書いてきましたが、今回は皆さまからもご要望の多い、「アール・ヌーヴォーのポスターの蒐集について」です。アルフォンス・ミュシャやトゥールーズ・ロートレックの作品を見ると綺麗だな、素敵だなと思い自分でも蒐集をしたくなった人も多いのではないでしょうか?しかし、自分で学ぼうにも専門書や入門書が少なく、誰に聞けばいいのか?どこで買えばいいのか?などもわからない状態だと思います。そこで、皆様が疑問に思うことを混ぜつつ蒐集の基礎知識を学んでいきましょう。

     

    特に皆様からお問い合わせが多い誤解が

    1:ポスターはロートレックやミュシャの原画の複製でしょうか?

    2:リトグラフとは?複製のこと?

    3:直筆のサインとエディションが必ず入っている

    の3つになります。特にこの3点は蒐集の上でも重要なことですので注意が必要です。

     

    1:ポスターはロートレックやミュシャの原画の複製でしょうか

     

    ポスターと聞くと、実際はロートレックやミュシャの油絵などの原画があり、それを一般用に配布や販売の目的をもって複製し、ポスターにした、と思われている方も多いかもしれませんがそれは大きな誤解です。この時代のアール・ヌーヴォーのポスターの大多数には原画というものは存在しません。皆様が美術館や展覧会などで展示され、ご覧になったロートレックやミュシャのポスターそれ自体がオリジナルの本物であり、オリジナルの本物は複数存在します。したがって1枚しかないということはありません。これはアール・ヌーヴォーが、大芸術や純粋芸術(彫刻・絵画・建築)に対抗して生まれた工芸品(ある程度量産される)の芸術から始まったことに由来しています。なので、人によっては絵画・彫刻はアール・ヌーヴォーの範疇に加えない場合もあります。しかし建築は外装の装飾や内装や家具などとの総合的な関係によりアール・ヌーヴォーの範疇に加えられています。

     

    さて、なぜ原画が存在しないかというと、ロートレックやミュシャなどのポスター作品は、広告物もしくは一般家庭用の装飾物としてある程度の量を目的に製作されたもので、もともとが、ロートレックやミュシャの素晴らしい絵をポスターに複製して販売しようとしたわけではないからです。浮世絵をご存知の方は、浮世絵を想像していただければと思います。

     

    しかし印刷物であるからには、どこかに画家の絵が存在しなければ作れないのでは?と思うことでしょう。たしかに印刷するには、印刷するための版、原版がなくては印刷できません。一般的に浮世絵などの木版画などは、画家の描いた作品を彫師が木の原版に彫ります。しかし、この時代のポスターはリトグラフと呼ばれる石版画の技法で製作されており、この技法により画家が原版に直接絵を描くことが可能になりました。そういう意味ではこの原版を原画ともいえますが、この原版には色もついていなければ背景のボカシなども描かれておらず、さらには左右反転しており完成された絵ではありません(モノクロの作品は除く)。

     

     

    画家により石板に直接描かれた、ロートレックのムーラン・ルージュ・ラ・グーリュ(イメージ図)

     

     

    まず上の図のように画家が石板絵を描き、そのバンに特殊な処理をすると、インクを弾くようになり印刷が可能になります。

    その後画家の指導のもと色を付けていきます。色の付け方も印刷や手彩色があり、特にロートレックの作品の背景は印刷ではなく吹き付けなどの手作業で製作しているものが多いです。

    したがって、色が全部塗られ作品が完成したものが、オリジナルの本物と言えます。この時代の印刷は現代のコピーとは違い陶芸や器などのような工芸品でした。しかも、原版の石は貴重であり再利用するものであったので、刷り終わると画家の絵は消され、次に新たな絵が描かれ利用されました。したがって原版も残っていないことが一般的です。

     

    全ての色が塗られ完成したムーラン・ルージュ・ラ・グーリュ

     

    ポスターのオリジナルの本物とはこの画家が版石板に画を描きそれに色をつけ完成した作品を指します。一回の版で100から1000の間で摺られることが多いですが、初期のポスターは広告物として使用されたり、もともと保存用には作られていないので破棄された物も多く現存数はとても少なく、貴重になります。

    したがってポスターには原画が存在せずその作品自体がオリジナルの本物ということになります。

     

    ただし後世にこの絵をもとに他の画家が絵を描き、色を付けた複製も数多くあります、しかしこれは当時コピー機が普及していなかったこともあり、ただ単純に複製して複製として販売したものと、本物に見せかけて製作し本物として販売された物(ニセモノや贋作)がありますので注意が必要です。

     

    次回は

     

    連載第4回:リトグラフとは?アール・ヌーヴォーのポスターを蒐集するには〜その2

     

    2:リトグラフとは?複製のこと?

     

     

    について書きますので、お楽しみに!

     

     

     

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